「五輪のチャンピオンにならなければ」

スピードスケートのオリガ・ファトクリナ選手

ミハイル・モクリューシン撮影/ロシア通信

 ファトクリナは、トップ選手としてひた走ってきた。国内のスプリントで4回優勝、距離別で3回優勝し、ロシア新も9回記録している。だが世界のシニア大会で目立つようになって、それほど長い時間は経過していない。2012年に行われたスピードスケート短距離のW杯ハルビン大会1000メートルで、初めて表彰台にあがったばかり。その後2013年3月のW杯エルフルト大会で銀メダルを獲得した。

 ファトクリナが歴史的な大活躍を遂げたのは、同じく2013年3月にソチの五輪会場「アドレル」アリーナで行われた、世界距離別選手権大会。オランダのイレイン・ブスト、カナダのクリスティン・ネスビット、アメリカのヘザー・リチャードソンを抑えて、1000メートルで金メダルを獲得。500メートルでも銅メダルを手にした。前年の14位から1位への飛躍は、奇跡的だった。世界距離別選手権でのロシア女子代表としては、スヴェトラーナ・ジュロワが500メートルで銅メダルを獲得した、2001年以来のメダル。ジュロワは2006年トリノ冬季五輪の女子500メートルで、金メダルを獲得した選手である。

 ファトクリナはこの五輪シーズン、主なライバルたちと直接対決、あるいは間接対決している。昨年12月に行われたベルリン大会の500メートルでは、金メダルを獲得した。ただこの時は、2010年バンクーバー冬季五輪金メダリストである韓国の李相花(リ・サンファ)が出場していなかった。李は36秒8の世界記録保持者。

 五輪は記録争いではなく、メダル争いだと、ジュロワは考える。「李には世界記録があるから、自分ならできる、調子の良さを保てる、すべてを正しくこなせる、という自信を持つことが可能。だけど記録を記憶している人は少ないから、金メダルを取って初めて永遠の歴史的人物になることができる。ファトクリナはロシア新を記録しているから、同じように自信を持てるはず」。

 ベルリン大会では、ファトクリナはお気に入りの1000メートルで、アメリカのリチャードソンとイギリスのブリタニー・ボウを警戒していた。順位は2人より後だったが、見事に3位を獲得。結果に満足していた。ロシア代表コーチは、リチャードソンとボウがそれほどの強敵ではなかったことに、一安心。アンドレイ・サヴェリエフ・シニアコーチはこの時、ファトクリナに対するアメリカ代表の優勢について話すのは、時期尚早としていた。「アメリカ代表はW杯後に帰国し、五輪に向けた準備を続ける。その後ソチの海抜に順応しなければならない。これは大変なこと」。

 「アドレル」アリーナにすでに勝利のイメージを持つファトクリナは、500メートル、1000メートル、1500メートルに出場する。五輪シーズンに入ってからは、1000メートルの2周目強化を目的として、1500メートルから始めている。ファトクリナは競争の仕方と、練習への姿勢を変えた。「自分の計画、周囲、目標をすべて変えて、以前の私とは180度違う人間にならなくてはいけなかった。昨夏はケガに気をつけながらたくさん練習して、足にぴったりとくるような靴に変えた。以前の靴はワレンキ(フェルトブーツ)みたいで、リンクも、ブーツも、支柱も感じなかったから」。

 競技中は秒数や競争相手のことは考えないようにしているという。だが、李の500メートルの加速、そしてアメリカのシェイニ・デイビスのカーブなど、他の選手から学ぶ気持ちも持っている。

 ファトクリナは自身のことを、特別な成功を遂げられていない「青二才」だと考えているが、目標は高く設定している。「アスリートとして自分自身を尊敬するために、何が必要か」という問いには、はっきりとこう答えている。「五輪のチャンピオンになること。ただそれだけ」。

 スプリント・チームを率いている、パーヴェル・アブラトケヴィッチ・シニアコーチは、チャンピオンになることは可能だと考える。「今シーズン、ファトクリナは自分のやっていることが何のために必要なのかを理解した。1年で精神的に大きく成長し、世界大会でチャンピオンになった。これ以上の記録は、五輪での勝利だけだろう」。

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