団結力で表彰台を狙う

アイスホッケー男子ロシア代表

 アレクセイ・クデンコ撮影/ロシア通信

 アイスホッケーはずっと、国にとって特別な存在だった。ソ連代表は1956年コルティナダンペッツォ冬季五輪に初めて出場し、胸に金メダルを輝かせて帰 国。冬季五輪でアイスホッケーは負け知らずと考えられた。批評の対象となったのは、チーム全体がうまく戦っていたか、ということだった。

 

ソ連崩壊後の低迷

 「赤い車」と呼ばれていたソ連代表が、五輪の表彰台の頂上に上がり続けた一方で、ロシア代表は1992年アルベールビル冬季五輪で1度金メダルを取っただけだ。それもこの時は「旧ソ連諸国合同チーム」の旗をかかげて戦っていた。完全なロシア代表になってから、1992年世界選手権に出場したが、準決勝に は食い込めなかった。1994年リレハンメル冬季五輪では、初めてメダルなしで帰国。この失敗は、伝説的なヴィクトル・チホノフ・コーチの時代に起こったものだが、新しいコーチのもとでも結果は出なかった。

 長野五輪でウラジーミル・ユルジノフ・コーチ率いるロシア代表は決勝に出場。だがゴーリーのドミニク・ハシェックを前に、チェコ代表を負かすことはできなかった。長野の銀メダルは、次の2002年ソルトレイクシティ冬季五輪で銅メダルに置きかえられた。ハーブ・ブルックス・コーチ率いるアメリカ代表が、 ヴャチェスラフ・フェティソフ・コーチ率いるロシア代表の決勝進出を阻止。アメリカの学生が1980年レークプラシッド冬季五輪でソ連代表に勝利し、金メ ダルを手にした、伝説的な「氷上の奇跡」のごとく、この時再びアメリカが「赤い車」にショックを与えた。

 2006年トリノ冬季五輪では「木メダル」(ロシアでは4位のことをこのように呼ぶ)を獲得。2010年バンクーバー冬季五輪ではヴャチェスラフ・ブィコフ・コーチの名で一瞬輝いた代表が、準々決勝でカナダに3-7で負けた。

 

代表の改革は必須

 アイスホッケーの関係者はこの悲惨な状態に、代表編成システムの見直しを余儀なくされた。まず指導者集団を増強。バンクーバー五輪ではゴーリーのコーチやゼネラルマネージャーが不在で、NHL(ナショナル・ホッケー・リーグ)の選手がシーズン中にいかにプレーしているかを、誰も見ていなかった。

 ジネトゥラ・ビリャレトジノフ・コーチになってから問題への取り組みは明らかに強化されたものの、ロシア代表の失敗は続いた。昨年の世界選手権では準々決勝でアメリカに3-8で負け、シーズン中にソチの「ボリショイ」アリーナ(五輪で使われる会場)で行われた2試合でも負けた。

 

NHLの選手を重視

 練習試合での敗退に、ビリャレトジノフ・コーチは激怒。ロシアでプレーする一部選手が、信頼を獲得できなかったと述べた。代表選手25人のうち、KHL(コンチネンタル・ホッケー・リーグ)に所属しているのは9人のみ。

 ディフェンダーのうち、ロシアでプレーしている選手は2人で、残りの6人は北米の選手。フォワーダーでは、ラドゥロフとコヴァリチュク以外に期待を寄せることができる。ビリャレトジノフ・コーチのコンセプトによると、残りの選手には3~4編成用意し、守りと主要選手がいない間の対戦相手の抑えをさせるという。

 一流選手だけで2~3チームつくれるカナダ、アメリカ、スイスとは異なり、ロシアのコーチの選択肢は限られている。申し分ないのはゴーリーのみで、ワルラモフとボブロフスキーは好調なシーズンを送っている。

 もっとも悲惨なのはセンター・フォワード。ここにはマルキンとダツュクに匹敵する選手が不在なのだ。そしてディフェンスも鉄壁ではない。39歳のセルゲイ・ゴンチャルが、最後まで五輪代表の候補に残っていたことが、多くを物語っている。安定したプレーを見せているのは、エメリン、ヴォイノフ、マルコフのみだ。

 

団結力で突破

 ロシア代表がソチの金メダルを獲得するには、チーム・プレーを生かすしかなさそうだ。そこにオヴェチキン、ダツュク、マルキン、ショミン、ラドゥロフ、コヴァリチュクの個人的な技をプラスする。

 ビリャレトジノフ・コーチはロシア通信のインタビューに対して、こう話している。「『戦場の一人は兵士に非ず』。ロシアに必要なのは団結したチーム。これは内部の規律でもある」

 ロシア代表がメダル候補になることは確かだ。そしてファンは金メダルを期待している。だが代表に近い人々は、あまり強気の宣言をしないようにしている。 ロシア・アイスホッケー連盟のウラジスラフ・トレチャク理事はこう話す。「代表が弱さを見せたとか、準備万端じゃなかったとか、対戦相手に無礼だったとか、そのように言わないことが大切。どの選手も100%の力を出すと考えている」

 選手は五輪について、あまり熱っぽく話さない。「ロシア代表が4位になると思うなら、それでいい。その方が楽だから。落ち着いて自分たちの試合に集中するだけ。アメリカの選手は名前でロシアより強いかもしれないが、名前ですべてが決まるわけじゃない。ロシアはアメリカにもカナダにも負けないと考えている。我々のチームは強いし、経験もさらに積んでいる」とエヴゲニー・マルキンはロシア通信に語った。

 アレクサンドル・オヴェチキンも同様の考えだ。「何を怖がるって?名前?氷上ですべてがわかるさ。万事オーケー になると思うよ。うちのメンバーは代表にふさわしい。重要なのはまとまったチームであること。課題は1番。1番を狙って進む。困難だろうが進むんだ」とロ シースカヤ・ガゼータ(ロシア新聞)に述べた。

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