アイススレッジホッケー物語

愛好家からメダル候補者へ

ロシアでアイススレッジホッケーが始まって、まだ5年も経過していない=グリゴリー・スィソエフ/ロシア通信撮影

 ソチ冬季パラリンピックもいよいよ開幕だ。ロシアの選手は史上初となる、全競技への出場を果たす。アルペンスキー、バイアスロン、クロスカントリースキー、車椅子カーリングに、アイススレッジホッケーの代表が加わる。

 

ゼロからのスタート

 ロシアのアイススレッジホッケー代表チームは、2010年バンクーバー冬季パラリンピック後まもなく結成された。そしてわずか3年半で、世界の強豪の仲間入りを果たした。昨年4月に韓国で開催された世界選手権では見事銅メダルを獲得。地元のパラリンピックでは、アメリカとカナダに勝利することを夢見ている。

 ロシア代表のセルゲイ・サモイロフ主任コーチはこう話す。「6年前、ロシアにはアイススレッジホッケーの選手が1人もいなかった。このような競技があることを知っていたのは、コアなアイスホッケーのファンのみ。2007年から少しずつ情報を集め、この競技を間近で見た人をインターネットで探し、さらに役員を集めた。カナダ製のスレッジ(ソリ)はほとんどあてずっぽうで購入したけど、他のさまざまな障がいに合わせて調整可能だということがわかった。すべて独学だね。初めてのアイススレッジホッケー国内選手権に参加した後の2009年に、エストニアの国際大会に出場して、エストニアに惨敗した。試合後に地元の有名な専門家がかけよってきて、スレッジの刃を切り替えろとか、スティックをもう少し長めに持てとか、うちの選手ひとりひとりに何をすべきかを説明してくれた。こうやって新しい競技をマスターしたんだ」。

 

「ロシア代表募集中」

 ロシア代表はなんと公募された。代表キャプテンのドミトリー・リソフはこう話す。「パラリンピック組織委員会のウェブサイトに、『アイススレッジホッケー・ロシア代表選手になりませんか』という案内が掲載されたんだ。それで自分の実力を試すことにした。候補はスレッジに乗せられて、滑るように言われ、気に入られた候補が残された。これをやるまではサッカーをしていたんだけど、足に欠損のある選手のサッカーはパラリンピックの競技になっていない。それでアイススレッジホッケーに残されたから、すぐに承諾したんだ。スレッジをもらって、1人の選手が大胆にターンしたり、シュートしたりしているのを見て『何だ簡単そうだな』と思ったんだけど、実際にターンしてみたらフェンスにぶつかった。2~3回特訓した後で、ようやく少しできるようになった」。

 愛好家から世界の強豪の仲間入りをするまではとても早く、わずか3年余りで障がい者のアイスホッケー・クラブが6つでき、代表は初めての世界選手権で3位についた。

 「世界大会に出場した時は、全試合に負けると思われていた。だがロシアはカナダとアメリカに負けただけで、その後ろにはヨーロッパのすべてのチームとアジアの1チームがいた。カナダとアメリカに勝つことも不可能ではない」とサモイロフ主任コーチ。

ビデオ提供:YouTube / Paralympic Games

 

普通の生活に戻る

 パラリンピックのスポーツでもっとも重要なのは勝利ではなく、自分自身と自分のコンプレックスを克服することだ。

 リソフはこう話す。「アイススレッジホッケーで普通の生活に戻ることができると思う。代表のルスラン・トゥチン選手は両足を失っているが、自分の人生は終わったという考えから抜けだすことができた。ルスランは8年間も自分のマンションから出なかったんだ。アイススレッジホッケーを始めたのは偶然。友だちにすすめられてやってみたら、すごい選手になった。ルスランは今や代表選手で、自分の家族もできた。半年前には息子も生まれた。今は自分を完全な人間だと感じている」。

 

パラリンピックで最大限の課題

 ロシア代表は高い目標をもってソチにのぞむ。

 代表フォワーダーであるイーゴリ・ロマキン選手はこう話す。「去年と今年、非常に困難な特訓を続けたんだ。戦術を重視し、ただ氷上で滑って相手を攻めるだけじゃなくて、多様な組み合わせを展開して、より見ごたえのあるプレーをしてる。ヨーロッパでこのようなプレーをしてるところはない。パラリンピックには良い状態でのぞみ、対戦相手に勝つよう努力する。皆とても真剣に準備してるし、金メダルを夢見てる。ただ北米のレベルがケタ違いなのも理解しておく必要があって、例えばカナダでは、200チームほどが活動してる。カナダ代表入りはすごく難しいけど、うちは競争がほとんどない。国がこの動きを支援してくれるようなことがあれば、全国的に人気が出るかもしれない」。

 2014年ソチ冬季パラリンピックは3月7日から16日までの10日間行われる。世界各国の選手が5競技72種目に出場し、メダルを争う。ロシア代表は前回の2010年バンクーバー冬季パラリンピックで、金メダル12個、銀メダル16個、銅メダル10個の計38個を獲得し、国別獲得数ランキング2位になった。ただし、ランキングは金メダルの数で決まるため、1位のドイツは金メダル13個、銀メダル5個、銅メダル6個の計24個である。

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