ソチ五輪で予想外の大躍進

悲観的予測を覆して金13個

写真提供:flickr.com/sochi2014

 前回のバンクーバー五輪では国別メダル獲得総数で11位に終わっていたことから、ソチ五輪では3位以内に入れれば・・・とかなり控えめな目標が立てられていた。悲観的な人は5位以下になると予測。楽観的な人あるいは大胆な夢想家はとても少なく、その予測に注意が向けられることもなかった。だが終わってみれば獲得した金メダル数でも総数でも、冬季五輪の自国の記録を塗りかえていた。

 このように開催国が金メダルの獲得数の記録を更新したのは4度目。1932年レークプラシッド冬季五輪のアメリカ、1952年オスロ冬季五輪のノルウェー、2010年バンクーバー冬季五輪のカナダに続く。

 今回ロシアが獲得したのは金メダル13個、銀メダル11個、銅メダル9個の計33個。それまで金メダルをもっとも多く獲得していたのは、ソ連時代の1976年インスブルック冬季五輪。メダル獲得総数では、1988年カルガリー冬季五輪でソ連代表が獲得した29個が最多だった。

 

ツイてなかったけど

 最後の2日間で、ロシア代表は一気に追いあげた。活躍したのは、4位だらけ、レース中の用具破損、距離別での転倒、射撃の射損じなど、ソチ五輪で負の記録をつくっていたバイアスロンとクロスカントリーだ。

 バイアスロン男子4x7.5キロメートル・リレー決勝では、ソチ五輪で唯一メダルを獲得していたエヴゲニー・ガラニチェフがメンバーに選ばれず、ファンの間で衝撃が走った。だがロシアの4人組は金メダルを見事獲得した。

 バンクーバー五輪15キロメートル・マススタートの金メダリストで、今大会のリレーに参加したエヴゲニー・ウスチュゴフはこう話した。「すべてを最終日に後回しするのはロシア人の特徴なのかもしれない。個人戦で活躍できなかったのに、リレーで良い結果をだして驚かせたことは何度もある」。

 クロスカントリー男子50キロメートル・マススタート決勝では、アレクサンドル・レフコフが金メダル、マクシム・ヴィレフジャニンが銀メダル、イリヤ・チェルノウソフが銅メダルを獲得して、表彰台を独占した。この2種目はロシアのお家芸で、非常に注目されていた。

 レフコフは人目をはばからずに泣きながら、こう話した。「この金メダルの価値は私の命以上だ。この気持ちを言葉であらわすことはできない。15年間これを目指してやってきた」。

 

フィギュアの団体戦と個人戦

 ソチ五輪から採用されたフィギュアスケート団体戦で、ロシアは金メダルを獲得。15歳のユリヤ・リプニツカヤはショートとフリーに出場し、五輪史上有数の若い金メダリストになった。ペアのタチヤナ・ボロソジャルとマクシム・トラニコフ組は団体戦と個人戦で優勝し、一大会で2個の金メダルを獲得するという史上初の快挙をとげた。アイスダンスのエレーナ・イリイヌィフとニキータ・カツァラポフ組は銅メダルだった。個人戦に出場した17歳のアデリナ・ソトニコワは、女子シングルとしてはソ連・ロシアあわせて史上初となる金メダルを獲得。キーラ・イワノワ、イリーナ・スルツカヤも達成できなかったことを実現した。

 物議をかもしたのはエヴゲニー・プルシェンコの個人戦棄権。団体戦で金メダル獲得に貢献したが、4本のボルトで固定された人工椎間板で支えられている腰椎が、プルシェンコの個人戦への出場を阻んだ。氷上から担架で運ばれてでも、自身のプログラムを滑るべきだったと言う人もいたが、腰椎のボルトの1本が4回転ジャンプの負荷に耐えられずに破損したことが、後に判明。ソチから受診のために直行したイスラエルで3月2日、再び手術を受ける。

 

アイスホッケーで落胆

 プルシェンコの話題は、アイスホッケーの話題へとすぐに変わった。2002年ソルトレイクシティ冬季五輪で銅メダルを獲得して以来メダルなしのロシア代表には、今大会こそという期待がかかっていたが、終わってみればソチ五輪最大の落胆をもたらしていた。

 ジンエトゥラ・ビリャレトジノフ監督は、準々決勝のフィンランド戦敗退後にこう述べた。「ファンにはこの結果に対する謝罪の言葉しかない。ゴールが少なかったことについて説明するのは難しい。ロシア代表には、自分のチームでたくさん得点している選手もいる。1シーズンに40ゴールをあげたオベチキンもそうだ。今はただ説明できない」。

 

韓国からの帰化選手が大活躍

 アイスホッケーのナショナル・ホッケー・リーグ(NHL)のスターが、海を越えて勝利をもたらすことはできなかった。その代わり、ロシアに帰化した選手が喜びを与えてくれた。トリノ五輪で金メダルを3個獲得していながら、ケガによってバンクーバー五輪への出場を果たせなかったスケートショートトラック男子の安賢洙(アン・ヒョン・ス)だ。ロシア代表として初めてのぞんだソチ五輪で、メダルを量産。金メダル3個(1000メートル、500メートル、5000メートル・リレー)と銅メダル1個(1500メートル)を獲得した。世界のショートトラック史でもっとも多くのメダルを手にした選手である。

 

アメリカより愛をこめて

 アメリカ人選手のヴィック・ワイルドも、自身のメダル獲得と夢の実現についてロシアに感謝を述べた。ロシア人スノーボーダーであるアリョーナ・ザヴァルジナと2011年に結婚し、ロシアに帰化している。両者ともに今大会のパラレル大回転でメダルを獲得。ワイルドは金、ザヴァルジナは銅。フィニッシュをした後の2人の抱擁は、もっともロマンチックなシーンだった。

 ワイルドはこう話した。「アリョーナは長い時間を一緒に過ごせる唯一の人。私に勝利のインスピレーションを与えてくれるし、一緒にいると正直になってしまう。生活では私よりキツいが、同時にとても傷つきやすい。そして私と同じようにちょっと変わり者なんだ!アリョーナがいるとすごく楽しくなる。20年後もこうして一緒にいたい」。

 

不和をこえて

 アレクサンドル・ズブコフとアレクセイ・ヴォエヴォダは、男子ボブスレーの2人乗りと4人乗りで金メダルを獲得した。これは男の友情の物語だ。数年間にわたって握手さえ拒んできたズブコフとヴォエヴォダは、不調和を忘れ、再びチームメイトになった。その結果手にしたのは金メダル。

 ズブコフはこう話す。「2人乗りや4人乗りで私たちが優勝することを信じていなかった人もいたが、私たちの経験は年を追うごとに重みを増していた。世界の偉大な選手が集まり、私たちは今日、その中で一番になった」。

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